ミトコンドリアは発電所

 矢印で示した細胞内小器官がミトコンドリアです。ミトコンドリアは、酸素を使って効率よく生命のエネルギー通貨であるATPを作ってくれると説明しましたよね。

赤矢印がミトコンドリア

 下の図は、ミトコンドリアでエネルギーを取り出しているイメージです。私の合成が下手で、燃えている感じがしませんがお許しください。ミトコンドリアでは、ブドウ糖という燃料を酸素を使って燃やしてエネルギーに変えています。

燃え上がるミトコンドリア

 燃焼の定義は、ある物質が酸素と結びつく化学反応のことです。この酸素と結びつく反応を酸化といいます。鉄が赤く錆びる現象も同じように酸化といいますが、この現象では光と熱を発生しないので、化学的には燃焼ではありません。燃焼反応が起こるためには『酸素』と『燃えるもの』の供給が必須条件です。

 酸素の供給は、肺で取り込まれた酸素を赤血球によって末梢まで運んでくれます。燃料には、小腸から吸収された炭水化物、脂質、タンパク質など様々なものが血液によって運搬されてきて使われますが、ここではお話をわかりやすくするためにブドウ糖で説明します。

酸素よブドウ糖は血液が運搬する

 ミトコンドリアとは燃焼によってエネルギーに変換する器官であると説明しました。前述のイメージ図のように、炎が見えるほど激しい燃焼が起これば生体が損傷されることは容易に想像できます。では、なぜミトコンドリアでは火傷を起こさずにエネルギーを取り出せるのでしょうか。それは、ミトコンドリアで行われている燃焼は、段階的に物質を酸化させながら、物質の持つエネルギーを穏やかに、徐々に取り出す燃焼だからなのです。もう少し、詳しく説明するとブドウ糖をH+と電子eにし、そのH+と電子eをエネルギーに変換してくれるのがミトコンドリアなのです。

ミトコンドリアの構造

 ミトコンドリアの構造をみてみましょう。ミトコンドリアは上図のように二枚の膜、内膜と外膜からできています。内膜は幾重にも重なったひだ状の構造をしており、このひだ部分をクリステと呼びます。また、内膜の内側をマトリックスと呼び、ミトコンドリア独自のDNAはこのマトリックス部分にあります。独自のDNAを持っていることが、ミトコンドリアが細胞外で単独で生活をしていた名残だと先程も述べました。

 主に、ブドウ糖分解によるエネルギーの産生はミトコンドリア内部で行われます。主にといったのは、実はほんの一部、2分子のATPは細胞質で作られます。ブドウ糖分子のままではミトコンドリアに入っていけないため、ブドウ糖1分子から2分子のピルビン酸という物質ができます。その時に嫌気的に(酸素を必要としない反応)2つのATPが出来るのです。この反応を解糖系と言います。解糖系でピルビン酸ができると、酸素が十分にあればピルビン酸はミトコンドリアの中に入っていきます。

 ミトコンドリア内で行われるのが酸素を用いた燃焼、つまり酸素呼吸です。まず、ピルビン酸はアセチルCoAになり、ミトコンドリア内でクエン酸回路と呼ばれる経路の中に入って行きます。ちなみに、脂肪やタンパク質が燃料になる時にもこのアセチルCoAとなってからエネルギーが取り出されます。クエン酸経路の名前の由来は、回路の出発点がクエン酸で、一周して元のクエン酸に戻ることに由来します。また、クエン酸回路はクレブス回路と呼ばれることもあります。この名称は発見者のイギリス人科学者クレブスに由来します。

 クエン酸回路では酸素を使って、ピルビン酸が二酸化炭素と水になるまで段階的に酸化されます。その結果クエン酸回路でH+と電子eが発生し、内膜部分にあるATP合成酵素をH+が通過することによって、ATPが産生されます。H+がATP合成酵素を通過する時に、酵素がちょうど水車のように回転し、エネルギーに変換され、そのエネルギーがATPとして貯蓄されていきます。つまり、電子伝達系は、H+でタービンを回す発電所のようなものなのです。

ATP合成酵素


 しかし、ここで注意しないといけない点が、ミトコンドリアで作られた全ての電子が、効率よくエネルギーになるわけではないことです。車を走らせる運動エネルギー得るための内燃機関でも、ロスとして熱エネルギーが発生します。ミトコンドリアでもエネルギーロスが起こっており、エネルギーロスの一部から活性酸素が発生してしまいます。

エネルギーロスから活性酸素

 つまり、酸素呼吸をしている以上、活性酸素の産生は避けるすべのない現実なのです。



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