炎症と活性酸素

 これまでは、ミトコンドリアと活性酸素の関係をお話してきたが、今回から、炎症時に産生される活性酸素のお話を始めさせてください。

 まず、炎症時に発生する活性酸素をお話しする前に、炎症時に産生する活性酸素は単なる『悪』ではないことを申し上げておきたい。炎症時の活性酸素は、外部からの侵入してきた自分に害を及ぼす異物、例えば細菌を殺菌する、つまり自己防衛手段としての役割を持っています。さらに近年、活性酸素が体内で情報を伝搬する働きをしていることも解明され始めており、体内にとって必要な物質でもあるのです。慢性炎症などで活性酸素の産生が続くと、身体に不具合が生じてくるのです。

暑局所では活性酸素が発生する。

 さて、炎症とは身体が局所を防衛する反応です。炎症局所では、患部が充血のため赤くなり、熱感を感じ、浮腫や痛みを伴うこともあります。炎症とは、身体の様々な白血球が働いて、細菌やウィルスなどの外部からの侵入者を排除し、体を修復するために起こっている現象なのです。

炎症局所では充血、熱感、浮腫、痛みが伴う。

 他方、過度の活性酸素のストレスが疾病につながることも事実です。つまり、活性酸素は功罪を持ち合わせた諸刃の刃(もろはのやいば)的物質であることをご理解ください。炎症の場で、活性酸素を産生するのは白血球、特に後述の好中球です。です。つまり、炎症反応の多くは免疫反応なのです。これから始める炎症のお話しをする前提として、今日は免疫とは何かのお話をさせてください。

 細菌、ウィルスなど身体は常に外敵からの危険にさらされています。ヒトが持つ外敵からの防衛手段を大別すると二種類に分けられます。つまり、『物理・化学的防御』と『免疫学的防御』です。

体外は異物まみれ

 まずは、物理・化学的防御のお話から。ヒトは免疫系以外にも、身体に異物が入ってこないような、もし入ってきても殺してしまうシステムを持っています。

 例えば、皮膚によるバリア機能です。また、皮膚には細菌を殺す物質(ディフェンシン等)があることも知られています。さらに、皮膚には常在菌という普段からヒトの皮膚に安全な菌が住み着いていて、悪いことをする菌から守ってくれることもわかっています。

 くしゃみや咳は異物を身体から吐き出そうとしている現象です。唾液や涙、胃液にも殺菌力があります。細菌が腸まで到達しても、腸内の常在菌が悪い菌をやっつけてくれます。

生体の物理・化学的バリア機構

 このような、白血球が関与しない異物からの防衛手段を物理・化学的防御と言います。

 この図は、皮膚から細菌が侵入するイメージ図です。申し上げた通り、ほとんどの細菌は、皮膚に備わった物理的・化学的バリアで侵入が防がれています。しかし、中には物理的・化学的バリアをすり抜けて体内まで侵入してくる細菌は存在します。そこで活躍するのが白血球細胞、つまり免疫系細胞たちです。

 後日、詳しくまとめていきますが、免疫系には、異物を全て攻撃してくれる『自然免疫』と特定の相手を覚えていて攻撃する『獲得免疫』二種類があります。自然免疫はいわゆる抵抗力という考え方に近いのかもしれません。

 獲得免疫は、インフルエンザの予防接種が典型的な例です。予めインフルエンザの予防接種をしておくと、もしかかっても軽症で済みます。これは、予防接種によって、免疫細胞に攻撃対象であるインフルエンザウィルスの形を記憶させておき、もし身体に侵入してきたら速やかに攻撃してくれるようにしているのです。

 明日から少しずつ免疫についてまとめていきます。その後、炎症へと話を進めさせてください。

 今日お勧めしたい本は、宮坂昌之先生が書かれた『免疫と「病」の科学』です。出版されて間もない本です。炎症が慢性炎症に移行してしまった時に起こる疾病がわかりやすくまとめられています。

免疫と「病」の科学

免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か (ブルーバックス) [ 宮坂 昌之 ]

 もう一冊は、池谷敏郎先生の『体内の炎症を抑えると病気にならない』です。この本も一般の方が読みやすい本だと思います。炎症が起こると、老化を促進し、様々な疾病を引き起こす。健康に長生きしたければ、炎症を防ぐことを奨励されています。

体内の炎症を抑えると病気にならない

体内の「炎症」を抑えると、病気にならない! クスリに頼らず全身の臓器を元気にするコツ (単行本) [ 池谷 敏郎 ]



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