ミトコンドリアは老化にも関与する

 今日はミトコンドリアが老化にも関係しているというお話です。

老化は誰にも避けれない

 2016 年、東京工業大学の隅良典名誉教授がノーベル賞を受賞されたことは記憶に新しいと思います。大隅先生が『オートファジー』という現象を発見されたことが評価されての受賞でしました。オートファジーとは自食とも呼ばれ、細胞内で不要になったタンパク質を除去するシステムです。乱暴に言えれば、細胞内のゴミをリサイクルし、新たな細胞の材料として再利用するシステムです。

 ミトコンドリアもオートファジーで分解されることがあります。前述の通り、ミトコンドリアは細胞内でATPというエネルギーを作り出す重要な器官です。なぜ、このような重要な器官を壊す必要があるのでしょうか?実は、ミトコンドリアは働き続けるとエネルギーロスが増えてATPの産生効率が悪くなってしまいます。ミトコンドリアでロスしたエネルギーはどうなるんでしたっけ?そうです、活性酸素になってしまうのです。

ATP産生能力が落ちたミトコンドリアは多くの活性酸素を作る

 生産効率が悪くなり、多くの活性酸素を作るようになったミトコンドリアをオートファジーで分解しているのです。活性酸素を多く作り出すミトコンドリアを排除することで、活性酸素の発生を抑えています。この作用が、老化防止の一因になっていると考えられています。

人は誰でも老化する

 老化とは何か、十人の学者がいれば10個の答えがあると言われるくらい、論争が激しい分野です。大きく分類して、臓器レベル、細胞レベル、遺伝子レベル、分子レベルと老化の原因は4つに分類されるようです。

 臓器レベル説では、ホルモンのバランスや、自律神経のバランスが色々な臓器に影響し、老化を促進するとの考え方です。

 細胞レベル説では、テロメアという言葉をご存知の方もいらっしゃると思いますが、細胞にはテロメアという分裂回数を決めている物質があります。そのため、加齢とともに細胞が分裂できなくなるという説です。

 遺伝子レベル説は寿命があらかじめ遺伝子にプログラムされている、つまり人は生まれながらにして、その人の寿命が定められているという説です。

 分子レベル説の中には、老化の原因の一つに活性酸素が挙げられています。活性酸素など体に害を及ぼす物質によって体が傷つけられますが、若いうちは活性酸素を除去したり、あるいは活性酸素で傷付いたところを修復する機能が活発に働きますが、加齢とともに能力が低下し、損傷が蓄積し、老化が進むという説です。

 当然、4つの説のどれか一つだけで、老化が進行するとは考えていません。つまり、4つの要因が複合的に作用することで老化が進行すると考えられます。

 遺伝子説に基づいた考え方では、哺乳類では少なくとも七種類の長寿遺伝子が見つかっています。長寿遺伝子が発現することで、生活習慣病や老年病の発症や進行を遅らせる機能があります。長寿ホルモンの一つであるSirT1という遺伝子は、ミトコンドリアを増殖させ、ATPの供給を増加させる働きがあります。その結果、ミトコンドリアの代謝を上げることによって細胞の代謝を上げ、その結果、老化を防いでくれています。

 逆に、ミトコンドリアが老化を促進する場合もあります。ミトコンドリアではATPが作られます。ATPの産生には多くの酵素が働いています。ミトコンドリアは約10000種類もの酵素が存在する化学工場なのです。ミトコンドリアは10000種類もの酵素の働きを調整しながらATPを作っているわけですから、工場を使い続けて老朽化すれば、ATPの生産効率が低下することは容易に予想されます。生産効率が低下したミトコンドリアからは大量の活性酸素が産生され始めるのです。

 活性酸素が攻撃する相手は自分自身の遺伝子、タンパク質、脂質等、多岐にわたっていています。若ければ損傷は速やかに修復されますが、加齢とともに修復能力が低下し、損傷部分が蓄積して老化が加速されていきます。

 また、活性酸素は、『炎症』を引き起こす張本人です。(炎症についてはまとめていますので、もう少しお時間をください)高齢で、炎症が起これば、炎症はなかなか治癒せず、慢性化する可能性が増します。この慢性炎症も老化の一因なのです。炎症については、後で詳しくまとめます。

慢性炎症は老化を促進する。

 このように活性酸素を出したり、ATPの生産効率が悪くなったりしたミトコンドリアを排除するシステムがオートファジーなのです。つまりミトコンドリアは生体システムによって厳密な品質管理が行われており、体に害をなすようになったミトコンドリアは速やかに排除されます。しかしながら、加齢とともにオートファジーの機能も低下していきます。すると、損傷したミトコンドリアが蓄積していき、その結果として神経性疾患などの発症につながります。以上の通り、ミトコンドリアは老化促進にも関係しているのです。

 本日オススメの本としては近藤祥司先生の『老化はなぜ進むのか』です。2006年と少し古い本ですが、一般のかたが理解しやすいように、老化が起こる原因を説いています。

老化はなぜ進むのか

老化はなぜ進むのか 遺伝子レベルで解明された巧妙なメカニズム (ブルーバックス) [ 近藤祥司 ]

 もう一冊は近藤祥司先生が翻訳監修された本で『老化生物学 老いと寿命のメカニズム』です。この本は少し高度で、生命科学系の学生さん向けだと思います。老化の定義から始まり、老化・加齢の原因学説、その根拠まで化学的に詳しく述べられています。

老化生物学 老いと寿命のメカニズ

老化生物学 老いと寿命のメカニズム [ ロジャー・B.マクドナルド ]



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