運動とミトコンドリアと活性酸素

 炎症の話をすると言い続けながら、本日もミトコンドリアが続きます。今日は、運動とミトコンドリアから発生する活性酸素に関してお話させてください。

運動時にはエネルギーを消費します。そのためにミトコンドリアは通常以上に働いています。

 運動には筋肉を動かすためのエネルギーが必要です。そのエネルギー源がミトコンドリアでした。よって、運動選手にとってはミトコンドリアの機能を促進し、効率的にATPを筋肉へ供給することが、成果を残すための重要な要素になってきます。

 短距離走選手、マラソン選手などアスリートは、酸素を使って脂肪や糖質を燃焼させ、ATPを作りだし、そのエネルギーを使って自己の能力を発揮しています。そのためには、自己の競技に適した筋肉が必要になってきます。強靭な筋肉を動かすためには一度に大量のATPが必要であり、持久力を得るには、継続的なATPの供給が必要になってきます。

筋肉の原動力はATPです。

 東京大学医学部抗加齢学講座の井上聡特任教授がミトコンドリアの電子伝達系に必要なタンパク質を発見しました。井ノ上教授のグループは、COX7RPそのタンパクは、ミトコンドリアのエネルギー産生効率を上げるとともに、体温を上昇させることを見出しました。体温が上昇しているということは、全身の生理活性が向上していることを示しています。

 実験的にCOX7RPタンパクを持たないマウス(特定の遺伝子を欠損させたマウスをノックアウトマウスと言います)は、ミトコンドリアの効率が低下し、ATPの供給率が悪くなるため、早く疲労を感じることがわかりました。この研究は、前々回に書いた『ミトコンドリア病』の解決方法へ発展する可能性もあります。

 次に、ラットを使った研究をご紹介します。ラットに有酸素運動をさせて、筋肉中のミトコンドリアにどのような変化があるのかを検討した研究があります。それによると、有酸素運動で筋肉に負荷をかけることによって、ミトコンドリア内での脂肪酸の分解が活性化、つまりATPの産生量が増えることがわかりました。

 以上の二つの研究から、優秀なアスリートの育成には、効率の良いミトコンドリアを作り出す遺伝子、つまり素質と、科学的に理にかなった筋肉への負荷を与える必要であることが立証されました。

 しかし、急激に過度な運動を行うと、ミトコンドリア由来の活性酸素の面から考えて、身体にとって負の結果が生じる可能性があることも念頭においてください。

 普段運動しない人が、急激にかつ過度の運動を行うと、ミトコンドリアが通常以上のATPを産生するようになり、その結果、ロスしたエネルギーから多くの活性酸素が生まれます。急激な運動時には、安静時に比べて10倍以上の酸素を必要とします。筋肉レベルで考えれば、100倍の酸素を必要とすると言われています。つまり、急性運動時にはこのATPの副産物である活性酸素が、脂質、タンパク質、核酸を酸化します。そして、人体に過度の酸化ストレスを与え、人体に有害な酸化脂質、酸化タンパク質、酸化DNAを作ります。

 少し脅かしすぎましたが、適度の運動を定期的に行うのであれば、酸化ストレスにさらされず、健康維持に貢献してくれます。適度な運動を維持して行うと、体の中で活性酸素を除去する酵素、SOD、カタラーゼなどの量が増えることがわかっています。また、運動で一過性にミトコンドリアを活性化することによって、インスリンの感受性が上がり、糖尿病の予防になるという報告もあります。この糖尿病予防効果は、ミトホルミシス効果という少し難しい名前で呼ばれています。活性酸素とインスリンの感受性についてもいつかまとめます。

 それでも運動時に発生する活性酸素が心配な方は、抗酸化物質の助けを借りるという選択もあります。例えば、ビタミンCの抗酸化力は有名です。ラットにビタミンCを与えて運動をさせると、活性酸素を除去するカタラーゼや、体内で作られる抗酸化物であるグルタチオンの濃度が上昇していたそうです。つまり、運動時にビタミンCを摂取することは、抗酸化に有効なのです。

柑橘類はビタミンCの宝庫

 今日のおすすめ本は、藤田紘一郎先生の『マンガでわかる若返りの本』とにかくわかりやすい本です。ミトコンドリアについては1つの章で扱っているだけですが、今日の内容を網羅しています。個人的に藤田紘一郎先生を尊敬していることもあり、今後も藤田紘一郎先生の本を紹介する機会が多いと思います。

マンガでわかる若返りの本

マンガでわかる若返りの科学 なぜ糖質ダイエットが必要なのか?寝たきりにならずボケない生活習慣とは? (サイエンス・アイ新書)[本/雑誌] (新書) / 藤田紘一郎/著

 2冊目は三石厳先生が書かれた『成人病は予防できる 活性酸素と成人病のメカニズム』です。栄養学的側面から活性酸素から体を守る仕組みを考えた本です。この本は私もまだ勉強中で、いづれ他のデータを加えてまとめます。

成人病は予防できる 
活性酸素と成人病のメカニズム

成人病は予防できる 活性酸素と成人病のメカニズム (健康自主管理システム) [ 三石巌 ]

 ミトコンドリア由来の活性酸素のお話は今日で一区切りにします。次回から、炎症と活性酸素に関する話題に切り替えます。しかし、今後もミトコンドリアに関する新しい話題を見つけたらご紹介すると思います。



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